各式は、溶接部を持つ部材を強度低下域と母材からなる複合材とみなし、設計の便宜上から複合材と等価な均質材を想定したものである。等価応力σywは次式による。
σyw=β・σy(3.11)
この場合、母材としてσyw/σy=1となるような材質(例えば、5083−O合金)ならばβ=1となり、強度低下域を考慮しない。
3.3.3疲労強度
(1)母材の疲労強度
アルミニウム合金は鋼材のように疲労限度を持たないので、繰返し数N=10 7の時間強度を疲労限度と同等に取り扱うのが慣例であり、5000系合金軟質の場合には、N=2×l0 6程度を超えるとS−N線の傾斜が水平に近づく傾向を持つ。
平滑材は、引張強さの高いものが疲労強度も高いとみなしてよい。両者の関係は、図3.31に示すようにかなりのばらつきを持つが、表面を押出し又は圧延のままとした板状小型試験片(厚さ2.7mm〜12mm)のN:10 7における両振り(応力比R=一1)又は片振り(R=0)*4の軸荷重疲労強度(応力振幅)は、引張強さσBからそれぞれ式(3.12)と(3.13)によって概略値30)が得られる。
R=一1:σw(10τ)=0・84σB 0.734(3.12)
R=0:σu(10 7)=0・22σB1.031(3.13)
疲労強度は平面曲げ≧軸荷重の傾向があり、また、軸荷重では、板厚の影響(寸法効果)があったとしてもごくわずかである。
切り傷や引っ掻き傷等は、その深さが板厚の0.5〜1%程度までならば疲労強度に及ぼす影響は小さい、したがって、組立又は加工中に生じた傷がそれを超える深さの場合には、ディスク・サンダー等の研削器具を用い、負荷方向に沿って丁寧に除去しなければならない。
*4疲労試験は応力の基本型として付図1に示すように、一定の極大値と極小値の間を正弦波状に規則正しく変動する応力を試験片に負荷して行われる。
応力の最大値をσmm。、最小値をσmmで表すと、応力振幅σa、応力範囲△σ、平均応力σm、応力比Rは次の各式のようになる。
σa=(σmax−σmin)/2 ?@
Δσ=σmax−σmin ?A
σm=(σmax+σmin)/2 ?B
R=σmin/σmax ?C
平均応力σm=0の場合が両振り応力(R=−1)であり、片振り応力は|σm|=бa、R=0の場合で応力変動が0→σmaxとなる。
平均応力は構造物や部材の自重、静的載荷物等によって発生する応力、また、溶接残留応力等の静的なものである。
疲労強度は、応力振幅σa、最大応力σmax又は応カ範囲△σで表示するが、溶接継手の場合は後2者のいずれかが用いられる。
付図1 繰返し応力
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